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『奇譚クラブ』戻る


昭和二十九年七月号(定価百円)曙書房

 『奇譚クラブが創刊されたのは、敗戦の翌年つまり1946年(昭和21年)のことで、現在イメージとなっているSM雑誌とは違い、判型はB5判、内容は実話雑誌といったもので、不定期刊行物であった。
 ・・・・(中略)・・・・
 それで、1951年(昭和26年)1月号より月刊誌となったが、内容は依然として「軟派小説決定版」とか「未亡人愛欲小説特集号」などというものが多く、わずかに「男色天国繁盛記」や「変態集団特集」などに編集の転換の徴候がみられた。
 ・・・・(中略)・・・
 ちょうどそのころ、『奇譚クラブ』の発行者・
吉田稔氏が、たまたま大阪梅田駅で、昔の戦友の須磨利之氏と出会い、それがキッカケで須磨氏が編集に参画することになった。そして、1952年(昭和27年)の5・6月合併号から、判型をA5判に替え、「戦争と性欲特集号」「倒錯の告白」など、SMに的を絞った雑誌を刊行することになったのである。
 ・・・・(中略)
 そして『奇譚クラブ』から、
団鬼六氏、千草忠夫氏などの作家が生まれたし、覆面作家の沼正三氏の『ある夢想家の手帳』や未来幻想マゾ小説と銘打った『家畜人ヤプー』は世間の注目を集めたのである。また、四馬孝氏や春川ナオミ氏、喜多玲子氏、小妻容子氏など、SMの世界をテーマに描く画家が世に出たのである。ちなみに、喜多玲子は、須磨利之氏のペンネームであり、美濃村晃という別名も使っていた」
    
〜『奇譚クラブ』のこと 
高倉一〜 徳間文庫『秘密の本棚 I 縛りと責め 幻の雑誌1953〜1964の記録』より

(注:高倉一氏とは元『風俗奇譚』編集長にして、神楽坂にある風俗資料館館長である)




 今回は立派な変態雑誌になってしまった頃、奇譚クラブが最も厚かった頃(昭和二十九〜三十年)の一冊を紹介する(昭和三十年五月号が発禁処分を受け、ページ数は一挙に減少する)。また、この頃、喜多玲子氏(美濃村氏)が東京のライバル誌「風俗草子」や「裏窓」に絵を描くようになったため、発行人・吉田稔氏との間に
何かしらの問題が生じたらしい。

 小説は少なく、変態論文ばかりが目につくのがこの時代の「奇譚クラブ」の特徴である。


「ロマンチックなサディズム」
 小説家・藤見氏のエッセイ。これはあんがいまともである。
 私(藤見)は、小学二、三年ころから芽生えたサディズムに気づいた。とくに映画の中で美女が悪漢のために危難に陥って、観客をハラハラさせるストーリー、それも時代劇のそれが良い。映画としては月並みでも、柱にグルグル巻きに縛られたヒロインが、苦しい猿ぐつわの息の下で、必死に救いを求めてもがく場面など、恍惚して眺めたものだ。そんなシチュエーションが楽しめるのは、映画という非現実世界のことであり、
彼女が最後は危機一髪で助かることを知っているからである。逆に特高や警察の拷問やズベ公たちのリンチは凄惨でありリアルすぎる。わたしはロマンティックなサディズムが好きだ。

「眼帯とマスク」

 眼帯をした女性になぜ色気を感じるかという話。エヴァの綾波より40年以上前から眼帯フェチはあったのだ。
 眼帯は正常な視力を奪うという意味で
猿轡に匹敵する拘束具といえる。とくに白いゴム紐が美しい女性の顔面に食い込んでおり、身体でもっともデリケートな眼球を覆っている、という点が素晴らしい。それは一種の奇形の美を連想させる。特に両腕を縛られた女性が無理やり眼帯をかけられ、その視力を不完全にすることに嗜虐的悦びを感じはしないか?


「告白・コルセット・マニア」


 一柳真砂子の告白となっているが男性の文章だ。女装マニアに近い告白のようだ。

 
わたし(真砂子)はコルセット・マニア。女子高二年のわたしに母はある日、コルセットを無理やり・・・。

 昨年あたりから、大きくなり始めた乳房を大切に包んでいたブラジェァも、ズロースも岡田さんの手によって、剥ぎ取られてしまいました。そうして何時の間にか用意していた別のコルセットが、わたしの身体に着せられました。ヒヤリとする冷たさでした。スポンヂが乳房とお尻に、にぶく触れます。二人は私をうつ伏せにすると、背の紐をしめ始めました。私は観念して目をつぶりました。しかしその目は再び開かねばなりませんでした。しめつけられる苦痛のために。じりじりと乳房が圧迫されて来ます。乳首の先がつぶされて泣いています。腰は肉が引きしまるように押しちぢめられます。そして胴はキリキリとしめ付けられて、呼吸もしだいに小刻みになって、やがてそれがうめきと変ります。私の肩からねばった唾液が糸を引いて、こぼれ落ちます。
 「駄目よ、こんなんじゃ、
まだしまるわ
 母の声です。
 ・・・・
 やがて、うつ伏せからあおむけにされました。私は何の考えもなくフラフラと立ち上がりました。大きな鏡に自分がうつりました。実物以上に豊かに盛り上がった胸、ふっくらと丸みを増した腰、そしてああ細くもくびれた私の胴体ー。



「連載エッセイ・あるマゾヒストの手帳から」

 正体不明の作家・沼正三氏によるマゾに関するエピソード。なんだかウソっぽいが、とても面白い。

「第58話 日の丸ズロース」

 戦前の日本に占領されていた台湾人の話。終戦直後になぜか台湾で日の丸が売れるという評判がたった。それは、一枚の日の丸から一枚のズロースが作られ密かに売られていたというのだ。しかも、赤い日の丸の部分が丁度股に当たってひどく汚れるように作られたという。
 わたしはこの話を聞いてマゾ的な昂奮を覚えた。神聖な国旗が汚されたという点もあるが、昂奮の元は、
日の丸と女の股倉との結合という点にある。日本人にとって一番神聖なものが、異民族の女の股で汚される、それは自分自身がそこで汚されるのと等しい昂奮を得たのだった。


 他には、切腹、処刑、男色、脇の下、義母への憧憬、自分を縛る悦び、女の足、股裂きの刑、乗馬ズボン、メンスバンド、浣腸、ズロース、ポニー、とにかく何でもありの世界だ。
 そして、「奇譚クラブ」がスゴイところは、これらの記事の大部分が
「本当の変態」が書いたものなのだ。資料的意味からも国公立の図書館で保存すべき雑誌だと思う。

 小説もある。

懸賞入選作品(四等)
「華々しき凌辱」(小山矮男)
 ちなみに団鬼六氏は奇譚クラブ100号記念懸賞小説の一等を「お町の最後」で受けている。懸賞金は20万円だったが、団氏には
5千円しか送られてこなかった



 女子大生・亜矢子はある蒸し暑い春の日、魔が刺したように一人で映画館に入った。
 誰かの手がするすると・・。
 痴漢に身体中を撫で回された亜矢子は、無理やり一軒の薄汚い飲屋に連れ込まれた。初めて飲む酒に酔った亜矢子は、少女時代に読んだ酒呑童子の話を思い浮かべていた。

 花を欺くように美しいお姫さまが、手も足も固くしばられて、花の都から、ひっさらわれて行く。そして、人気もない、けわしい山道を、大男の肩の上でゆられながら、いずこへともなく山の奥へ、奥へと連れて行かれる。
 
あぁ、そのかわいそうなお姫さまの、その時の切ない胸のうちはいかばかりであったろうかと、少女時代の亜矢子は、その悲しげな物語を聞くたびに、小さい胸を抱いて、ほっと切ない吐息をもらしたものだ。
 ・・・・・
 しかし、今の彩子には、その酒呑童子の物語にかくされたほんとうの意味が、よく分かるような気がした。そうだわ、それは女にとては、思っただけでも、ぞくぞくするようなことなんだわ。

 車に乗せられ郊外の一軒屋に入れられた亜矢子を後ろ手に縛り上げたのだ。

「ふっ、ふっ、ふっ、お前みたいな別嬪が、こうして縛られて、転がされて、ひいひい泣いている所は、全くふるいつきたい位ぞくぞくする眺めだな。ほらほら、お前があばれるだけ、スカートがめくれるじゃないか。ふっ、ふっ、いっそのこと、丸裸になって、縛られてみるか」
「いやッ、いやッ、いやです」
 
 男はギラつく眼を妖しく血走らせ乍ら、いきなり両足をばたすかせる亜矢子を・・・・・・・つけうと、そのふっくらとした・・・・・ ・・・ ・・・ッチリおおて・・・ ・・・ ・・・を、苦もなく・・・ ・・・ しまった。
「あっ、それだけは・・・」
 亜矢子は無我夢中でそう口走ったが、もう遅かった。・・・ ・・・ ・・・むしり取られて、おおうものも・・・ ・・・ ・・・が、けだもののような男の視線にさらされていうるのを意識すると、羞恥で熱く体がほえるばかりで、もう抵抗する力は尽き果ててしまっていた。
「どうだい、お嬢さん、これを見な」
 男はいやらしい笑みをうかべ乍ら、その・・・ ・・・ ・・・ようにして、彼女の眼の前におしつけた。あろうことか、男はいきなり・・・ ・・・ ・・・彼女の口中深く押しこんだのだ。



 
・・・・ ・・・・ ・・・・だらけだ。

 上の文章で彼女の口の中に男が入れたモノは何であろうか。
 実はもう少し読むとわかるが、男のチ○ポ・・ではなく、彼女のズロースなのだ。伏字はかえっていやらしい妄想を掻き立てる効果があることがよくわかる。
 この後、彼女はくすぐり責めを受け、最後に四つんばいで尻を縄で打たれながら歩かされる。本番シーンはなし(もしかしたら編集部で削除された?)。

 編集部が自由に作品に手直しすることを後の団鬼六氏は怒っていた(「花と蛇」第四回)。

 

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